国家資格建築・技術

消防設備士の難易度・合格率・勉強時間

甲種は工事・整備・点検まで、乙種は整備・点検までと、免状の類ごとに扱える消防用設備が決まっています。

最終更新: 2026-09-02

消防設備士の基本情報

正式名称消防設備士
分類国家資格
実施団体一般財団法人 消防試験研究センター
試験形式筆記はマークカードを使う四肢択一式、実技は写真・イラスト・図面等による記述式。甲種特類は筆記45問で2時間45分、甲種の特類以外は筆記45問と実技(鑑別等5問・製図2問)で3時間15分、乙種は筆記30問と実技(鑑別等5問)で1時間45分
受験資格乙種はどなたでも受験できます。甲種の特類以外は国家資格等または学歴による受験資格が必要で、甲種特類は甲種第1類から第3類までのいずれか1つと甲種第4類・第5類の計3種類以上の免状が必要です
試験日程中央試験センター(東京)と道府県支部で実施。試験日程・受付期間は支部ごとに異なります
受験料甲種 6,600円、乙種 4,400円(いずれも消費税非課税)
合格率令和7年度(2025年4月〜2026年3月) 全体35.4%(受験者100,198人)。甲種計32.5%・乙種計38.3%で、類別では乙種第7類64.7%から乙種第3類26.8%まで開きがあります
難易度★★★☆☆
独立のしやすさ★★☆☆☆
勉強時間目安消防試験研究センターは標準的な学習時間を公表していません。乙種は筆記30問と鑑別等5問、甲種の特類以外は筆記45問に製図2問が加わり、出題数と試験時間が倍近く違います。図面を描く製図がある分、甲種は乙種より準備の幅が広くなります
申込方法試験日程・受付期間は受験する道府県支部(東京都は中央試験センター)ごとに異なります。全国一律の申込締切はありません
公式サイト試験の公式ページを見る

消防設備士とはどんな資格?

消防設備士は、屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備といった消防用設備等の工事や整備を行うための国家資格です。実施しているのは一般財団法人 消防試験研究センターで、危険物取扱者試験と同じ団体です。

消防試験研究センターは、劇場・デパート・ホテルなどの建物には用途・規模・収容人員に応じて消防用設備等の設置が法律で義務づけられており、その工事や整備を行うには消防設備士の資格が必要だと説明しています。資格がなければ携われない業務があるタイプの資格です。

免状には甲種と乙種があり、できることが違います。

免状 できること
甲種 工事整備対象設備等の工事・整備・点検
乙種 消防用設備等の整備・点検

つまり、新しく設備を取り付ける工事に関われるのは甲種だけです。乙種は既存設備の整備と点検までになります。

免状は「類」ごとに分かれています

もう一つの特徴が、扱える設備がごとに区切られていることです。免状は類ごとに交付されるため、複数の設備を扱いたい場合は類ごとに試験を受けることになります。

免状の種類 工事整備対象設備等
甲種 特類 特殊消防用設備等(従来の消防用設備等に代わり、総務大臣が同等以上の性能があると認定した設備等)
甲種・乙種 第1類 屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、屋外消火栓設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備、共同住宅用スプリンクラー設備
甲種・乙種 第2類 泡消火設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備、特定駐車場用泡消火設備
甲種・乙種 第3類 不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備
甲種・乙種 第4類 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備、共同住宅用自動火災報知設備、住戸用自動火災報知設備、特定小規模施設用自動火災報知設備、複合型居住施設用自動火災報知設備
甲種・乙種 第5類 金属製避難はしご、救助袋、緩降機
乙種 第6類 消火器
乙種 第7類 漏電火災警報器

第6類(消火器)と第7類(漏電火災警報器)には乙種しかなく、甲種の区分がありません

受験者数がとくに多いのは乙種第6類(消火器)と甲種第4類(自動火災報知設備)です。令和7年度の受験者数は乙種第6類が32,400人、甲種第4類が21,819人で、他の類を大きく上回っています。ただし受験者数には他の類をすでに持っている方の追加取得も含まれており、はじめて受ける方がどの類を選んでいるかは公表されていません。

難易度と合格率

令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の実施状況は次のとおりです。合格率は受験者数に対する割合で、申請者数で割った値ではありません。

甲種

申請者 受験者 合格者 合格率
特類 1,557人 1,292人 412人 31.9%
第1類 18,625人 12,934人 3,707人 28.7%
第2類 5,676人 4,334人 1,179人 27.2%
第3類 5,587人 4,353人 1,375人 31.6%
第4類 30,821人 21,819人 7,527人 34.5%
第5類 5,404人 4,226人 1,712人 40.5%
甲種計 67,670人 48,958人 15,912人 32.5%

乙種

申請者 受験者 合格者 合格率
第1類 2,624人 2,048人 584人 28.5%
第2類 935人 790人 235人 29.7%
第3類 1,156人 965人 259人 26.8%
第4類 10,618人 8,047人 2,736人 34.0%
第5類 1,413人 1,168人 481人 41.2%
第6類 42,082人 32,400人 11,541人 35.6%
第7類 6,959人 5,822人 3,766人 64.7%
乙種計 65,787人 51,240人 19,602人 38.3%

全体では受験者100,198人・合格者35,514人で合格率35.4%でした。

ただし、この全体の35.4%という1つの数字だけで難易度は測れません。もっとも高い乙種第7類の64.7%と、もっとも低い乙種第3類の26.8%では2倍以上の開きがあり、どの類を受けるかで難易度の見え方が変わります。消防試験研究センターは、類ごとに合格率が違う理由については説明していません。当サイトが確認した範囲では、受験者の内訳(科目免除を受けた人の割合など)も公表されていないため、数字の差を読み解く材料は公表資料にありません。

申請者数と受験者数の差にも注目してください。甲種第1類では18,625人が申請して12,934人が受験しており、3割を超える人が受験していません。合格率は受験した人を分母にした数字です。

合格基準と試験科目

合格基準は甲種特類とそれ以外で分かれます。

区分 合格基準
甲種 特類 各科目ごとに40%以上で、全体の出題数の60%以上
特類以外(甲種・乙種) 筆記試験で各科目ごとに40%以上かつ全体の出題数の60%以上、かつ実技試験で60%以上

科目ごとの足切りがあるため、得意科目だけで全体の60%を取っても合格になりません。加えて特類以外は実技が独立した条件になっており、筆記と実技のどちらかが基準に届かなければ不合格です。

出題数と試験時間は次のとおりです。

区分 筆記 実技 試験時間
甲種 特類 45問 なし 2時間45分
甲種(特類以外) 45問 鑑別等5問・製図2問 3時間15分
乙種 30問 鑑別等5問 1時間45分

筆記はマークカードを使う四肢択一式、実技は写真・イラスト・図面等による記述式です。実技という名前ですが、実際に設備を操作するのではなく紙の上で答える形式です。甲種にだけある製図は図面を描く問題で、乙種にはありません。

科目免除

消防設備士・電気工事士・電気主任技術者・技術士等の資格を持っていると、申請により試験科目の一部が免除され、免除される問題数に応じて試験時間も短くなります。ただし甲種特類に科目免除はありません。

注意したいのは、免除を受けるには免状の交付を受けている必要がある点です。消防試験研究センターは、試験に合格していても次回試験の受験願書提出時までに免状が交付されていなければ科目免除を受けられないと案内しています。合格と免状交付は別の手続きです。

勉強時間の目安

消防試験研究センターは標準的な学習時間を公表していません。また、同センターは試験実施機関として、学習方法や参考図書の案内、受験準備講習等は行っていないと明記しています。

手がかりになるのは、上の表にある出題数と試験時間の差です。甲種は乙種に対して筆記が15問多く、さらに図面を描く製図が加わって試験時間もほぼ倍になります。製図は選択肢から選ぶ学習とは準備の仕方が変わるため、甲種と乙種を同じ感覚で見積もらないほうが安全です。

過去に出題された問題は公式サイトで公開されているので、まずは受ける類の出題傾向を確認してから計画を立てるとよいでしょう。

受験資格と試験日程

乙種はどなたでも受験できます。学歴・実務経験・年齢の制限はありません。消防試験研究センターは、国籍が日本以外でも受験して免状を取得できると案内しています。

甲種には受験資格が必要です。特類以外は、国家資格等によるものと学歴によるものの2種類に大別されます。

区分 主な例
国家資格等 受験する類以外の甲種消防設備士免状/乙種消防設備士免状の交付後2年以上の整備経験/電気工事士/電気主任技術者/技術士/1級・2級管工事施工管理技士/1級・2級建築士/無線従事者(アマチュア無線技士を除く)/消防用設備等の工事の補助者として5年以上の実務経験など
学歴 大学・短期大学・高等専門学校(5年制)で機械・電気・工業化学・土木・建築に関する学科または課程を修めて卒業/高等学校・中等教育学校で同じ学科等を修めて卒業/大学等で該当する授業科目を15単位以上修得など

甲種特類は別枠で、甲種第1類から第3類までのいずれか1つと、甲種第4類・甲種第5類の計3種類以上の免状の交付を受けていることが条件です。いきなり受けることはできません。

なお、消防試験研究センターのよくある質問では、認定電気工事従事者認定証や監理技術者資格者証では甲種の受験資格にならないと明記されています。似た名前の資格証があるため、申請前の確認が要ります。

試験日程は都道府県ごとに違います

試験は中央試験センター(東京)と各道府県支部で実施されており、試験日程・受付期間は支部ごとに異なります。全国一律の試験日や申込締切はありません。当サイトでも具体的な日付は掲載せず、公式サイトの「試験日程[全国一覧]」でご確認いただく形にしています。

現住所や勤務地にかかわらず、希望する都道府県で受験できます。近隣県の日程が都合に合えば、そちらに申し込むこともできます。

試験手数料は甲種6,600円・乙種4,400円で、いずれも消費税は非課税です。申請方法は電子申請と書面申請の2つがありますが、消防試験研究センターは令和10年度から受験申込みを原則として電子申請のみとする予定だと案内しており、いまのうちから電子申請の利用を呼びかけています。

同一試験日に同じ種類の試験を2回以上受験することや、違う種類の試験を受験することは原則できません。例外として、電気工事士免状を持っていて科目免除を申請する場合に限り、第4類と第7類を同一時間帯に受験できます。

結果は、支部別に合格者の受験番号が公示されるほか、受験者全員に合否と正答率を記載した試験結果通知書が送付されます。不合格だった場合も自分の正答率が分かる仕組みです。

免状の交付と講習の受講義務

試験に合格しても、それだけでは資格を取得したことになりません。受験した道府県の消防試験研究センター支部(東京都の場合は中央試験センター)に申請して免状の交付を受ける必要があり、手数料は2,900円です。

取得後には2つの継続手続きがあります。

手続き 対象・時期 手数料
写真の書換え 写真の撮影日が免状交付の日から10年経過するとき 1,600円
本籍等の書換え 本籍・氏名等の記載事項に変更があったとき 700円

住所の変更や、同一都道府県内での本籍の変更では書換えは不要です。

そしてもっとも見落とされやすいのが講習の受講義務です。総務省消防庁は、消防設備士は都道府県知事が行う講習を定期的に受けなければならず、現在点検や工事などの業務に従事しているかどうかにかかわらず受講が必要だと案内しています。根拠は消防法第17条の10で、受講の間隔は消防法施行規則第33条の17が次のように定めています。

  • 免状の交付を受けた日以後における最初の4月1日から2年以内に1回目
  • その講習を受けた日以後における最初の4月1日から5年以内に次回。以降も同様

つまり、資格を使う予定がなくても免状を持っている限り講習が続きます。取得を検討する段階で、この継続的な負担も見ておくとよいでしょう。

独立して働くなら

消防設備士は、資格がなければ請け負えない業務があるタイプの国家資格です。独立を考えるうえでの土台になるのは、点検が法律で義務づけられていることです。

消防法第17条の3の3により、防火対象物の関係者は消防用設備等を定期に点検し、その結果を消防長または消防署長に報告しなければなりません。点検の間隔は消防庁告示で定められており、外観や簡易な操作で確かめる機器点検が6か月に1回、実際に設備を作動させて確かめる総合点検が年1回です。報告の間隔は、百貨店・旅館・病院・地下街などの特定防火対象物が1年に1回、それ以外が3年に1回とされています。

さらに消防法施行令第36条第2項は、延べ面積1,000平方メートル以上の特定防火対象物などについて、消防設備士または消防設備点検資格者に点検をさせなければならないと定めています。一定規模以上の建物では、有資格者でなければ点検を担えません。

現実的な進み方は、消防設備の会社に勤めて実務を覚え、扱える類を増やしてから独立するという順序です。設備は類ごとに免状が分かれているため、1類だけでは受けられる仕事が限られます。実務でよく組み合わされるのは、消火器の乙種第6類、自動火災報知設備の甲種第4類、消火栓・スプリンクラーの甲種第1類あたりで、複数を揃えるほど1つの建物で完結できる範囲が広がります。工事まで請け負うなら甲種が必要です。

集客について: 依頼元はビル・マンションの管理会社、店舗・工場のオーナー、消防設備業者からの下請けで、一般消費者ではありません。上のとおり点検と報告は法令で間隔が決まっているため、同じ建物で繰り返し発生する仕事になります。入口としては、元勤務先や同業からの紹介、管理会社への営業が中心になります。対応できる範囲を広げる方向としては、扱える類を増やすことに加えて、電気工事士や建築設備の資格を組み合わせる形があります。

こんな人におすすめ

  • 建物設備・ビルメンテナンスの仕事に就いていて、担当できる範囲を広げたい方
  • 第二種電気工事士を取得済みで、科目免除を活かして次の資格に進みたい方
  • 危険物取扱者 乙種第4類を取得し、同じ団体が実施する別の国家資格に挑戦したい方
  • 受験資格の制限がない資格から始めたい方(乙種は誰でも受験できます)

乙種であれば受験資格を問われずに申し込めます。工事まで担当したい場合は、電気工事士や学歴などで甲種の受験資格を満たせるかを先に確認してください。

出典・参考情報

受験料・日程等は変更される場合があります。受験の際は必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。