国家資格語学

通訳案内士の難易度・合格率・勉強時間

業務独占は2018年に廃止され、いまは都道府県知事の登録を受けた人だけが「全国通訳案内士」と名乗れる名称独占の資格です。

最終更新: 2026-08-17

通訳案内士の基本情報

正式名称全国通訳案内士
分類国家資格
実施団体観光庁(試験事務代行機関:独立行政法人国際観光振興機構〈日本政府観光局・JNTO〉)
試験形式第1次は多肢選択式(マークシート方式)で、外国語90分・日本地理30分・日本歴史30分・一般常識20分・通訳案内の実務20分の5科目。第2次は10分程度の口述試験
受験資格年齢・性別・学歴・国籍等に関係なく受験できます
試験日程年1回。2026年度は第1次(筆記)が8月16日、第2次(口述)が11月29日
受験料一カ国語 14,850円/二カ国語 29,700円(別途、事務手続手数料としてクレジットカード払いは一カ国語495円・二カ国語986円、コンビニ払いは一カ国語350円・二カ国語548円がかかります)
合格率2025年度 最終合格率14.7%(受験者3,987人・最終合格者585人)。言語別では英語15.7%・中国語10.8%・韓国語14.6%。2024年度は10.0%
難易度★★★★
独立のしやすさ★★★☆☆
勉強時間目安公式の目安は非公表です。外国語の到達度と、日本地理・日本歴史の知識量によって必要な量が大きく変わります
申込方法年1回。2026年度の願書受付は6月1日〜7月9日で終了しています(電子申請のみ)
公式サイト試験の公式ページを見る

申込・試験日程

回次申込受付期間試験日
2026年度試験2026年6月1日(月) 〜 2026年7月9日(木)2026年度の願書受付は終了しています。出願は電子申請のみで、郵送での施行要領の配付・出願受付は行われません第1次(筆記)2026年8月16日(日)/第2次(口述)2026年11月29日(日)合格発表: 筆記試験合格発表 2026年9月25日(金)予定/最終合格発表 2027年1月22日(金)予定

日程は変更される場合があります。申し込みの際は必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

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全国通訳案内士とはどんな資格?

全国通訳案内士は、報酬を得て外国人に付き添い、外国語で旅行に関する案内を行うことを業とする国家資格です。試験は観光庁が実施する国家試験で、日本政府観光局(JNTO)が観光庁長官の試験事務代行機関として毎年1回実施しています。2026年度の事務手続きと試験運営は株式会社JTBに委託されています。

この資格を理解するうえで欠かせないのが、2018年1月4日に施行された改正通訳案内士法です。この改正で通訳案内士の業務独占規制が廃止され、資格を持たない方でも有償で通訳案内業務を行えるようになりました。一方で、資格を持たない方が「全国通訳案内士」またはこれに類似する名称を使うことはできません。つまり現在は、業務そのものではなく名称が守られている資格という位置づけです。

試験に合格したあとは、居住する都道府県知事への登録を行って初めて全国通訳案内士を名乗れます。JNTOによると、2025年4月1日現在の言語別延登録者数は27,950人です。

試験で選べる外国語は、英語・フランス語・スペイン語・ドイツ語・中国語・イタリア語・ポルトガル語・ロシア語・韓国語・タイ語の10言語です。語学系の資格のなかでは珍しく、語学力だけでなく日本地理・日本歴史・一般常識・通訳案内の実務までが問われる構成になっています。

難易度と合格率

JNTOが公表している2025年度の受験者数・合格者数は次のとおりです。

言語 受験者数 第1次合格者 第1次合格率 第2次受験者 第2次合格率 最終合格者 合格率
英語 3,180人 918人 29.8% 989人 50.6% 500人 15.7%
フランス語 146人 9人 6.2% 12人 33.3% 4人 2.7%
スペイン語 118人 29人 23.6% 30人 66.7% 20人 16.9%
ドイツ語 47人 18人 38.3% 19人 47.4% 9人 19.1%
中国語 268人 57人 21.8% 68人 42.6% 29人 10.8%
イタリア語 55人 3人 5.7% 5人 80.0% 4人 7.3%
ポルトガル語 34人 14人 42.4% 12人 33.3% 4人 11.8%
ロシア語 35人 4人 11.1% 4人 0.0% 0人 0.0%
韓国語 82人 12人 14.6% 15人 80.0% 12人 14.6%
タイ語 22人 7人 35.0% 8人 37.5% 3人 13.6%
3,987人 1,071人 27.6% 1,162人 50.3% 585人 14.7%

全体の最終合格率は14.7%です。前年の2024年度は受験者3,849人に対し最終合格者385人で10.0%でしたので、年度による振れ幅が大きい試験だと分かります。

この表を読むときに注意したい点が2つあります。

1つは、第2次試験の受験者数(1,162人)が第1次合格者数(1,071人)を上回っていることです。これは、筆記試験を免除された方が口述試験から受験するためです。施行要領でも、口述試験を受けられるのは「筆記試験に合格した方(筆記試験を免除される方を含む)」と定められています。

もう1つは、第1次合格率と最終合格率で分母がそろっていないことです。JNTOは表に「受験者数には、筆記試験免除者数を含む」と注記しています。実際に検算すると、最終合格率は受験者数で割った値と全言語で一致します(英語は500÷3,180で15.7%)。一方、第1次合格率は10言語のうち7言語と全体計で一致しません(英語は918÷3,180で28.9%ですが、公表値は29.8%です)。フランス語・ドイツ語・韓国語のように一致する言語もあり、扱いがそろっていません。

ずれ方も一定ではありません。英語のように公表値のほうが高い言語もあれば、スペイン語(29÷118は24.6%、公表値23.6%)やロシア語(4÷35は11.4%、公表値11.1%)のように公表値のほうが低い言語もあります。JNTOは第1次合格率の分母が何かを示していないため、この欄は受験者数に対する割合としては読めません。第1次の通りやすさを見るときは、合格率の数字ではなく合格者数の実数を手がかりにするのが安全です。

言語別に見ると、受験者数が少ない言語ほど合格率が大きく動きます。ロシア語は第2次試験の受験者4人に対して合格者0人、イタリア語と韓国語は第2次合格率80.0%と、いずれも母数が1桁から10人台です。受験者数の少ない言語の合格率は、年による偶然の影響を受けやすいため、単年の数字だけで難易度を判断しない方が安全です。

試験科目と合格基準

第1次(筆記)試験は5科目で、いずれも多肢選択式のマークシート方式です。観光庁のガイドラインで、科目ごとの時間・満点・合格基準点が定められています。

科目 試験時間 満点 合格基準点 問題数
外国語 90分 100点 原則70点 4題構成
日本地理 30分 100点 原則70点 30問程度
日本歴史 30分 100点 原則70点 30問程度
一般常識 20分 50点 原則30点 20問程度
通訳案内の実務 20分 50点 原則30点 20問程度

筆記試験の合否は、科目ごとに合格基準点を設定し、すべての科目で基準点に達しているかどうかで判定されます。1科目でも基準を下回れば不合格になるため、得意科目で稼ぐ戦略が通用しません。なお、実際の平均点が合格基準点から著しく離れた科目については、試験委員と事務局による検討会を経て合格基準が事後的に調整されることがあります。

外国語の出題は、外国語文の読解問題1題(配点40点程度)、外国語文の和訳問題1題(20点程度)、和文の外国語訳問題1題(20点程度)、あるテーマや用語について外国語で説明する問題1題(20点程度)が基準です。一般常識は、試験実施年度の前年度に発行された「観光白書」や、新聞の1面で大きく取り上げられた時事問題が題材になります。通訳案内の実務は、原則として令和7年4月に観光庁が発行した「通訳ガイドテキスト(初版)」が試験範囲です。

第2次(口述)試験は1人あたり10分程度で、筆記試験で選んだものと同じ外国語で受験します。内容は次の2題です。

  • 試験委員が読み上げる日本語を外国語訳し、その問題文に関連した質疑に答える問題(読み上げ内容のメモは認められます)
  • 提示される3つのテーマから1つを選んで外国語で説明し、そのテーマについて試験委員と外国語で質疑応答を行うプレゼンテーション問題

合否は、プレゼンテーション、コミュニケーション(臨機応変な対応力・会話継続への意欲等)、文法及び語彙、発音及び発声、ホスピタリティの5つの評価項目について基準を設定したうえで、原則として7割を合格基準点として判定されます。

科目免除の要件

この試験の特徴の1つが、免除制度の幅広さです。ほかの語学検定や資格の合格実績で、筆記試験の科目が免除されます。おもなものを挙げます。

持っている実績 免除される科目
実用英語技能検定(英検)1級 外国語筆記試験(英語)
TOEIC Listening & Reading Test 900点以上/TOEIC Speaking Test 160点以上/TOEIC Writing Test 170点以上(いずれも公開テスト) 外国語筆記試験(英語)
中国語検定試験1級、中文水平考試(HSK)6級180点以上、華語文能力測験(TOCFL)Level6 精通級(C2) 外国語筆記試験(中国語)
「ハングル」能力検定試験1級、韓国語能力試験(TOPIK)6級 外国語筆記試験(韓国語)
実用フランス語技能検定試験1級、スペイン語技能検定1級、DELE C1・C2・Superior、ドイツ語技能検定試験1級、実用イタリア語検定1級 各言語の外国語筆記試験
総合旅行業務取扱管理者試験または国内旅行業務取扱管理者試験の合格 日本地理
歴史能力検定 日本史1級または2級 日本歴史
大学入学共通テストの日本史B・旧日本史Bで60点以上 日本歴史
大学入学共通テストの現代社会・旧現代社会で80点以上 一般常識

このほか、筆記試験の一部の科目で合格基準に達した方は、次回の試験でその科目が免除されます(外国語は同じ種類の外国語に限ります)。一の外国語で筆記試験に合格した方が、同じ外国語で次回を受験する場合は筆記試験全体が免除されます。すでに一の外国語で試験に合格した方が別の外国語で受験する場合は、日本地理等の筆記試験が免除されます。

注意点として、TOEICと共通テストによる免除には有効期間があります。TOEICは当該得点を得たテストが行われた日の属する年度またはその翌年度に実施される試験まで、共通テストは当該年度の末日から起算して5年以内に実施される試験までが対象です。また、免除があっても受験手数料は減額されません

すでに英検1級やTOEIC900点、旅行業務取扱管理者をお持ちの方は、免除を使って受験科目を減らせる可能性があります。出願前に、施行要領の「免除申請早見表」でご自身が該当するかご確認ください。

勉強時間の目安

JNTOと観光庁は、学習時間の目安を公表していません。必要な量は、選ぶ外国語の到達度と、日本地理・日本歴史の知識量によって大きく変わります。

計画を立てるうえで手がかりになるのは、免除の基準に使われている水準です。外国語筆記試験の免除要件が英検1級やTOEIC 900点であることから、外国語については、免除されない場合でもそれに近い力が求められる試験だと考えられます。また、日本地理・日本歴史・一般常識・通訳案内の実務の4科目は、いずれも原則70点または6割という基準点が設定されており、語学の準備だけでは通過できません。

対策の順序としては、まず免除に使える実績があるかを確認し、残る科目に時間を配分する形が現実的です。免除で科目数を減らせれば、そのぶんを口述試験の練習に回せます。

受験資格と試験日程

受験資格に制限はなく、年齢・性別・学歴・国籍等に関係なく誰でも受験できます。

2026年度試験の日程は次のとおりです。

項目 日程
ガイドライン公開 2026年4月6日(月)
官報公示 2026年4月28日(火)
施行要領公開 2026年5月22日(金)
願書受付 2026年6月1日(月)〜7月9日(木)
第1次(筆記)試験 2026年8月16日(日)
筆記試験結果通知 2026年9月25日(金)予定
第2次(口述)試験 2026年11月29日(日)
最終合格発表 2027年1月22日(金)予定

2026年度の願書受付は7月9日で終了しています。出願は電子申請のみで、郵送での施行要領の配付および出願受付は行われません。受験票も郵送されず、電子申請システムのマイページで公開されます。

筆記試験は1日で5科目を続けて受ける形式です。外国語が11時00分から12時30分、昼休みをはさんで日本地理が13時40分から14時10分、日本歴史が14時40分から15時10分、一般常識が15時40分から16時00分、通訳案内の実務が16時30分から16時50分という時間割でした。

受験地にも制度上の制約があります。筆記試験は札幌市・仙台市・東京近郊・名古屋市・大阪近郊・広島市・福岡市・沖縄県の8か所ですが、口述試験を受けられる場所は言語によって異なります。英語・中国語・韓国語は東京近郊・大阪近郊・福岡市の3か所で、それ以外の7言語は東京近郊のみです。

英語・中国語・韓国語であっても、口述試験の受験地を自由に選べるわけではありません。筆記試験を東京近郊・大阪近郊・福岡市で受けた方は同じ地域が受験地となり、札幌市・仙台市・名古屋市・広島市・沖縄県で受けた方はこの3か所から選ぶことになります。つまり、筆記試験を地方で受けた場合、口述試験では移動が前提になります。11月末の予定を組むうえで見ておきたい点です。

受験手数料は一カ国語につき14,850円、二カ国語で受験する場合は29,700円です。支払いはクレジットカードまたはコンビニエンスストアのみで、いずれも事務手続手数料が別途かかります。実際に支払う総額は次のとおりです。

支払方法 一カ国語 二カ国語
クレジットカード 15,345円(手数料495円) 30,686円(手数料986円)
コンビニエンスストア 15,200円(手数料350円) 30,248円(手数料548円)

郵便や銀行振替送金では支払えません。また、免除の有無によって受験手数料が減額されることはなく、納めた受験手数料は通訳案内士法第10条の規定により返還されません。

なお、2027年度試験の日程は2026年8月17日時点で公表されていません。2026年度はガイドラインの公開が4月6日、官報公示が4月28日、願書受付の開始が6月1日でしたので、同じ流れであれば春以降の公表になります。

独立して働くなら

全国通訳案内士の仕事は、通訳案内士法が定めるとおり「報酬を得て、外国人に付き添い、外国語を用いて旅行に関する案内をすること」です。訪日外国人旅行者に同行し、行程に沿って観光地の地理・歴史・文化を外国語で案内する形が基本になります。

独立を考えるうえで正面から見ておきたいのが、2018年の法改正で業務独占が廃止されたという事実です。現在は資格がなくても有償でガイド業務ができるため、資格そのものが仕事を確保してくれるわけではありません。制度上守られているのは「全国通訳案内士」という名称だけで、その名称も、試験に合格しただけでは使えません。都道府県知事の登録を受けて初めて名乗れます。

登録したあとに続く義務もあります。観光庁は、全国通訳案内士は5年に1度、観光庁が登録した研修機関が実施する研修を受講しなければならないと定めています。取得して終わりではなく、資格を維持するために定期的な受講が必要になる点は、活動の計画に入れておく必要があります。

言語の選び方は、独立を考えるうえで意味を持ちます。2025年度の受験者3,987人のうち英語が3,180人と、当サイトの計算でおよそ8割を占めており、受験者の分布は英語に大きく偏っています。英語以外の言語は受験者が少なく、その言語の需要が見込める地域やテーマと組み合わせられるかどうかが判断の分かれ目になります。なお、JNTOが公表している延登録者数は2025年4月1日現在で27,950人ですが、言語別の内訳は公表されていません。

なお、口述試験の受験地が英語・中国語・韓国語以外は東京近郊のみであることからも分かるように、この資格は言語によって制度上の扱いが異なります。独立を目指す場合は、どの言語でどの地域を案内し、仕事をどこから受けるのかまで具体化してから判断されることをおすすめします。

こんな人におすすめ

  • 語学力を日本の観光の文脈で使いたい方。読解や訳出だけでなく、日本地理・日本歴史・一般常識・通訳案内の実務まで含めて問われる構成です
  • すでに英検1級やTOEIC 900点をお持ちの方。外国語筆記試験が免除されるため、残る4科目に集中できます
  • 旅行業務取扱管理者を持っている方。総合・国内のいずれの合格でも日本地理が免除され、旅行業の知識も通訳案内の実務と重なります
  • 英語以外の言語を学んできた方。受験者数が英語に大きく偏っているため、言語を選べること自体が進路の幅になります。ただし英語・中国語・韓国語以外の言語では口述試験の受験地が東京近郊のみになる点は計画に入れてください
  • フリーランスとして働くことを具体的に考えている方。業務独占がない資格である以上、名乗れることをどう仕事につなげるかまで含めて考えられる方に向いています

逆に、資格を取れば仕事が確保されると考えている場合は、期待と実態が離れやすい資格です。2018年の法改正の内容を理解したうえで受験を判断されることをおすすめします。

出典・参考情報

受験料・日程等は変更される場合があります。受験の際は必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。